管狐物語
⒌ 最後の春休みの日
「…ん…」
桜はひいたままの布団の上で、祖母の写真を抱いたまま、丸くなっていた。
昨夜は泣いたまま、眠ってしまったらしい…。
ぼうっとした頭で、ゆっくりと身体を起こすが、瞼が重く、だるい。
鏡を見なくても、自分の顔がどうなっているのか、だいたい検討はついた。
…目、腫れぼったい…
桜は、ぬぼ〜っと立ち上がり、顔を洗うべく、洗面所に向かおうとする。
頭は働かず、ただ、本能のままに動いていたから、ふすまを開けて、誰かにぶつかるなんて、思ってもいなかった。