管狐物語

「ちょっと!桜!どうしたの?その顔⁈」

夕方になり、桜が笑顔で帰って来た。
しかし、その顔は、擦り傷や引っ掻き傷でいっぱいだった。

「へへ」

桜は、得意げに祖母に笑いかけた。

「おばあちゃんの悪口言ったら、許さない!って、今日友達とケンカしたの」
「…桜…」
祖母は、俯いてしまった…

あれ?まずかったかな?

「でも、勝ったよ!
友達も、謝ってくれたし!
私も、ちゃんと謝ったよ!」

桜は、慌てるようにまくし立てる。


祖母は、くくくっと肩を震わせて、堪らずに笑い出した。


「あははは!
桜、よく頑張ったねぇ。
おばあちゃんの為に、ありがとう」

祖母は、桜の頭を優しく撫で、またくくくっと笑った。
桜はぱあっと顔を綻ばせ、祖母に抱きついた。





優しくて、大好きな祖母が笑ってくれるだけで、桜は嬉しかった。

「大好き!おばあちゃん!」
「おばあちゃんも、桜が大好き!」

2人で抱き合いながら、あははと笑い合う。
幸せな時間が優しく流れていた…




















…祖母が亡くなったのは、それから、数日後の事だった…
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