日本暗殺
希里斗の声だ


「何してるの?」


「別に…何も。なんで?」


電話の向こうは不気味なほど静かだ


「今私…あの家の前にいる」


沈黙が流れた


希里斗は何も答えない


画面を確認した私の目に映った、携帯が刻む秒数が、まだ通話中であることを示している


その時、微かではあるが確かに、こちらに近づいてくる人の気配を感じた



暗闇にうっすらと浮かび上がったその人物は、希里斗だった


やっぱり、希里斗はここにいた


「よくここ覚えてたね。大丈夫だった?」


気遣い、というよりも少し、苛立ちの響きさえ感じられる


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