HAWKE BRIGHT
「これ、見てください」
懐から“雑誌の切り抜き”を取り出した沼田は、それを徐ろに山城達の方へ向ける。
「善田桃子……」
山城はポツリと呟いた。
“年商500億女社長の秘密!”
大きな見出しのついた記事に載っているのは、有名ジュエリーショップの女社長、善田桃子。
彼女は自らショップを創業、そして全国チェーン化を早々と果たし、今や海外にまで店舗を展開する凄腕である。
「は、はい。それで、その……彼女が抱いているその猫が、僕の猫なんです」
「……誘拐か何かですか?」
「はい、きっと、絶対そうに違いない。こ、この女が……この女が僕の大切な猫を盗んだんだ! お願いです、取り返してください!」
突如感情的になり語りだした沼田を、山城は少し困ったように見た。
少し離れた二見は、冷静な様子でカタカタとキーボードを鳴らす。
沼田によると、猫の首輪からして、自分の猫に間違いないのだそうだ。そして何故盗まれたのか──それは、猫の種類にあるという。彼の飼ってある猫は中々手に入りにくいことから、マニアの中でも高価で取り引きされているのだ。