愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『"娘さんについて、お願いしたいことがあります。10分でいいんです。お家にお伺いしたいのですが"だって』

それって、まるで"娘さんをください"みたいな言い方じゃない?

聞いてるこっちが恥ずかしくなってきちゃった。

『だから私、先生に言ったのよ。"うちにご挨拶だけに来るなんて有り得ない。夕飯をうちの家族全員と一緒に食べてこそ、本当の挨拶なのよ"って』
『すまないねぇ、先生。かえって強引過ぎて迷惑掛けてしまって』
『いえ、とんでもない、有難いお話しです』

お父さんの低い声に少し健吾さんの声のトーンが下がっているように思えた。

『大丈夫』

お父さんは、

『先生がここに来た目的の"お願いしたいこと"は、私も妻も既に分かっているつもりだ』

と、健吾さんの目を見て言った。
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