愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『お話ししても、よろしいでしょうか?』
『いいですよ。じゃないと、食事も喉を通らないでしょうし』
『ありがとうございます』

健吾さんは箸を置いた。

『私は、今から1年半ほど前に弟を通じて初めて玲奈さんにお会いしました』

まぁ、残念ながら私は覚えていなかったけどね…

『その時、私は一生に一度の出会いであると、直感で思ったのです。それからしばらく時間がかかりましたが、私は東京に戻ってきました。玲奈さんに会いたくて会いたくて』

お父さんもお母さんも、静かに健吾さんの話を聞いている。

『そこに、さらなる偶然で、ゴールドヘブンリーホテルのロビーで再会を果たしたのです』
『ゴールドヘブンリーって、シンジの披露宴か』
『そうだと思います。この偶然は運命なんだと信じて疑わなかったのです』

健吾さんは真剣に、言葉を選びながらいつもよりゆっくり話しているような気がする。
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