愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『その時点でナルガクに赴任することが決まっていたので、玲奈さんにとにかく会えると楽しみにしていたのに、担任をすることになったクラスの生徒の中に、玲奈さんの名前を発見し、愕然としました』

"私より1週間先に驚いておいた"って言ってたけど、そんな心境だったんだね。

『もちろん担任をやりながらだって玲奈さんを思い続けることは可能だと思います。しかし僕の想像は、玲奈さんと違う学年を担当して、彼女に会うことだったのに、同じ学年どころか、担任になってしまった』

一瞬、健吾さんは下を向いて、すぐにまた目線を上げた。

『始業式の日に玲奈さんと再会を果たした僕は、強引に彼女を学級委員にしました。なるべく、怪しまれない程度に接点を強めたい、完全に僕の私情が働いた結果です』
『普段の玲奈なら、絶対学級委員なんてやらないもんね』

お母さんは半分笑いながらそう言った。
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