愛されることの奇跡、愛することの軌跡

『これは私なりの解釈なんだが、恐らく玲奈はまだ、いい出会いが出来てないんだと思う。何らかをきっかけに大人を信用できなくなり、顔色を伺いながら、下手に目立つのをやめている』

お父さん、私のことをそう見ていたなんて知らなかった。

『このままでは、夢を持たず、自分の考えも持ってないから主張しないできない、つまらない大人になってしまう。今、玲奈の気持ちは分かった。あと少しなんだ』
『あと、少し…』
『あとは、健吾くん、君の力で玲奈を一人前の大人にしてもらえないだろうか』

お父さんのその言葉に、"フフ"と少し笑ったお母さんが

『玲奈、先生…いや、健吾くんに甘えてみなさいよ』
「お母さん…」
『健吾くん、私はね、玲奈が好きになった人は間違いないと思ってるの。教師だろうが同級生であろうが金持ちであろうが貧乏であろうが、そんなの関係ないと思うの』

お母さんは、不安そうな表情の健吾さんに、あくまでも穏やかに話す。

『子供が人を愛するようになるタイミングなんて、そんなの親は決められない。健吾くんは自分の立場とか、年齢差とか、いろいろ壁を作っているんだろうけど、それを壊せるかどうかは、あなたたちの愛の育み方次第じゃない？』