愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『だから、原口先生と何かあったんだと考えるのは容易だった。調べさせたよ。その原口先生のこと。成瀬川のネットワークを駆使して。あと、玲奈のお父さんとも話した』
「お父さん?」

『ニューヨークでの出来事は、大筋で聞いた。玲奈は、その出来事から逃げるために、従兄を好きだとアピールして親に心配かけないように行動し、でも大人…特に男性を見ると同じことをされるのではないかと疑心暗鬼になる。"大人の様子を伺いながら空気を読む"という周りの玲奈に対する評価は、実はあの出来事からくるただの"怯え"によるものだった。ただ、周りは"怯え"だとは当然思わないから、様子を伺うさまだと思い、それを指摘された玲奈もそう思い込むようになって、結果的にあの出来事から逃げてきた』

段々、思い出してきた。

あの出来事。
思い出したくない。

「お父さんから聞いたんでしょ?私が話すことなんて、ないよ」

体が震えてきた。
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