愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『俺の目をみて話すんだ』
「…倉庫には、跳び箱とか、マットとか、バスケットボールとか卓球台とか、たくさんあったけど、その卓球台を壁のようにしてその奥にマットが敷いてあって、そこに私は寝かされたの」
『うん』
「そうしたら、いきなり先生が上から覆いかぶさってきて、私に…キスをした」

その情景が思い浮かんだとたんに私は息ができなくなった。

苦しい、苦しい。

すると健吾さんは厚手のビニール袋を持ってきて、私の横に座った。

『この袋に息を入れるんだ』
「ん?」
『いいから、ゆっくり吐け。吐いたらゆっくり吸え。そう、繰り返し…』

何度か息を吸ったり吐いたりしているうちに、落ちついてきた。健吾さんはその間、背中をずっとさすってくれていた。
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