愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『玲奈も、手を合わせるか?』


「もちろん」


私は迷わずそう答えた。


健吾さんが愛した人なら、きっと素敵な女性だったはず。


『墓前で手を合わせるなら、少し話しておいた方がいいよな、紅葉(モミジ)のことを』


紅葉さんは、健吾さんが高校1、2年にかけて付き合った4つ年上の女性。


付き合っていた頃はかつてナルガクの校門前にあった定食屋で働いていた。


健吾さんたちは学校帰りの溜まり場として毎日のようにそこへ通ううちに…健吾さんと紅葉さんが恋仲になる。


ただ、紅葉さんはそのまま定食屋の看板娘であり、ナルガクの内外から人気が高かったので、二人は周囲に内緒で付き合っていた。
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