愛されることの奇跡、愛することの軌跡
しかし…健吾さんが高校3年の6月3日。


分娩に紅葉さんの心臓が耐えられず、紅葉さんは亡くなった。


元々、心臓が弱かった紅葉さんがノリさんの反対を押しきって、出産したらしい。


『いくら、ノリの子供を妊娠していて、俺の彼女でも何でもないのに、いざこの世からいなくなると、猛烈な喪失感を覚えたんだ』


車は墓地に着く。


バケツに柄杓を借り、あらかじめ用意していた花と線香を持って、紅葉さんの墓前に来た。


「先に、健吾さんが1人で行ってきて。私少し離れて見てるから」


健吾さんと紅葉さんの思い出。


苦いものかも知れないけど、今日は年に一度、その思い出を呼び起こす日。


私はその邪魔をしてはいけないと思った。


『分かった』


先に、ここを訪れていた先客がいたのだろうか。綺麗な花が手向けられていた。
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