愛されることの奇跡、愛することの軌跡
ん?
先生は私の目を見た。

『な?"うさぎちゃん"』

え?
先生覚えていたの?

でもやはり先生の意図が見えず、私はその驚きを噛み殺した。

「覚えていらっしゃったんですね」
『当たり前だろ。俺は君より一週間先に驚いておいたよ』

相変わらず淡々と話す先生。

『それにしても俺が教室に入った時の君の驚きと言ったらなかったなぁ。ある意味、予想通りだった』
「予想通り、ですか?」
『君は感情を素直に出せるうさぎちゃんだと思ったから』

…あの時のたった数分の時間の中で分かってしまうもの?
でも、私はそんなこと言われたことない。

なぜなら、私は大人の中ではいい子ちゃんしてる、計算高い人間だ。

『制服は、個性を潰すんだな。君が虚勢を張っているように見えるよ』
「私は、私です。それに、先生こそ、あの時と印象が違います。虚勢を張っているのは先生の方だと思います」
『いや、制服だけじゃないな。君は教師の顔色を伺いながら過ごしてる。さすが、学校一の優等生』
「な、何ですか?」
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