愛されることの奇跡、愛することの軌跡
「…いえ、そんな。頭を上げてください」


『私はいつもそうだ。自分の思いだけで行動し、いざ人に迷惑をかけると、お詫びして頭下げて回る。一時は許してもらえても、それを繰り返すと、人は私を信用しなくなる。そうやって、私は離婚を5回した』


健吾のお父さんは、下げていた頭を上げた。


『健吾を始め、4人の子供たちは、私のようにはなって欲しくない。しかし、私にはどうすればいいのか、分からない』


「健吾さんは、私におまかせください」


健吾は微笑んで私を見ている。お父さんは少し驚いた表情だ。


「健吾さんは、あなたが思われているほど、心ない人間ではありません。それは、愛することを恐れて女性との付き合い方が適当であったとは聞いています。でも、あなたと違うのは、人への思いやりの深さです」


健吾は、私をトラウマから救ってくれた、恩人。そして人を愛することを教えてくれている、最愛の人。
< 350 / 548 >

この作品をシェア

pagetop