愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『まぁ、それも一時凌ぎだろうけどな。会社を動かすにはそれ相当の運転資金が必要だから、不渡り1回起こしているのは、相当厳しいはずだ』


土地取得をした後、ホームセンターとは定期借地権契約の延長を提案しようと考えていて、過去の強引な土地取得のやり方のための業界の批判を退けるつもりだ。


『近々、あのホームセンターの3倍の規模のショッピングセンターが近所に出来るらしい。だからどちらにせよ、ホームセンターも長くは続かないだろう』


なるほど。


経営者はそこまで考えるんだね。


『あと、ふたりに話しておきたいことが2つある』


お父様は私を見た。


『健吾は、高等部で代用教員を終えたら、龍成社で働いてもらい、次期社長を目指すことになっている。今も時間を作って会社の勉強をしてもらっているんだ。だから玲奈ちゃん、そのつもりでね』


「は、はい」


健吾が忙しい理由はそこだったのか。


夏休みの今、吹奏楽部だって休みなのに、全然時間が取れないから。


寂しいけど、今の私は受験生。


そんなこと言う資格はない。
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