愛されることの奇跡、愛することの軌跡
良美さんは、フローリストになる夢を追いかけ、自らアトリエを開いたばかりの時期。


健吾はそんな良美さんを見て、自分の夢と向き合うことを決めた。


ただ…自分は成瀬川家の御曹司。


夢と立場を天秤にかけることも許されない状況。


お父様に掛け合って、2年だけ、小学校の教師をやらせてもらうことを許された。


『良美さんがね、健吾を前向きにさせたのは間違いないんだけど…でもさすがの良美さんも、健吾の傷つき、歪んだ愛情と言う点では健吾を救うことが出来ず、むしろ"愛"の部分では良美さんとの出会いが逆効果』


実穂さんはうつむいた。


『結局、良美さんと健吾はあれから15年の空白がある中で、良美さんは素敵な人と再婚できて、子供もいるわけでしょ?健吾にしてみれば、そんな状況で実母から"母の愛"なんて満足に貰える訳がないじゃない。だから、さらに健吾を路頭に迷わせたのよ』


良美さん自身は、今とても幸せそうに見える。


でもその幸せの中に健吾はいない。


自分は、誰から愛を貰えるのだろうか。


もがき苦しんだ。
< 378 / 548 >

この作品をシェア

pagetop