愛されることの奇跡、愛することの軌跡
その生活は…


『今じゃ考えられないけどね、毎日のようにどっかで女の子を引っ掛けてはホテルへ連れ込むか、アル中手前まで酒に溺れるか。大学3年の終わりまではとにかく酷かった。その後、教育実習や教員採用試験があったからアルコールは止めたけど、女の子の手癖は、札幌行ってからも直ってなかったみたい』


実穂さんは心配して声を掛けるものの、健吾は"お前に言われる筋合いはない"と、全く聞く耳を持たなかった。


『実は、私が自分自身を変えようと思ったのは、紅葉さんのことがきっかけなのよ』


実穂さんは、健吾のピンチに何もしてあげられなかった。


でもそれは自らの今までの振る舞いのせい。


人からの評価なんてどうでもいいとそれまで思っていたけど、人から評価されなければ、人から信用されることはない。


ましてや、相談されたり、頼られたりするなんてもっての外だ。


健吾の態度でそれを思い知って、"変わらなきゃ"と思うようになった。


『女の私達にはちょっとわからない感覚なのかも知れないけど、見ず知らずのそういう女の子たちと"疑似恋愛"をしていたのかも。その子たちを紅葉さんと重ねていたのかな』


実穂さんは、少し冷め気味のコーヒーをひとくち飲んだ。
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