愛されることの奇跡、愛することの軌跡
"成瀬川家の御曹司が、外部進学ねぇ"と、冷やかす輩も多数いたし、紅葉とのことからほとんど学校に来なくなっていたノリを初め、マサは進学せずに海外で料理修行。テツも内部進学だったから、受験戦争に勝つにはなかなか敵や誘惑が多かった。


俺が東都に行こうと思ったのは、兄貴の影響。


兄の亮輔は、8歳の頃に交通事故で下半身麻痺になり、それからは車椅子だ。


でも元来、頭が良くて勉強は常にトップクラス。


それこそ、玲奈と張るくらい。


兄貴も東都に行きたかったけど、バリアフリー設備の不十分さを理由に断念し、私立のトップである星恵(セイケイ)大に入ったんだ。


弟の俺は、別に誰かに言われることなく、兄貴が断念した東都に行こうと必死に勉強したんだ。


センター試験もギリギリだったし、その後も前期日程で受かったけど、それも当落線上。


文科三類に入ったけど、教育学部で必修の教職課程を取っている俺は、やっぱり単位がギリギリで、留年寸前。


他の人が3年時にやる教育実習を、俺は4年時にやることになってしまい、教員採用試験の勉強と重なって死ぬほど大変だったんだ。
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