愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『何もないよ、別に』


「何も出来なくて、ごめん。上杉に頼んでおいたから、残りの時間、俺の代わりに守ってくれると思う。もちろん担任としての立場でお前を守ることはするけど、やり過ぎると怪しまれるしな」


『知ってたんだ』


「うん。だからってわけじゃないけど大森の評定平均と内申点を上げることが出来ず、星恵大への推薦状が出せない。それらの点数は全て1学期までで決まるからな。だから大森は、一般入試。次の登校日に、本人へ通告する」


大森には気の毒だけど、他の教科の先生との総合的な判断だから、仕方ない。


今度こそ、親が出てくるか。


出てきても、押さえるけどな。


「歯痒いな」


『何が?』


「大っぴらに玲奈を守れないってことがさ」


玲奈は笑った。


『私は今の健吾で十分だよ。最高の男!』


と、俺に抱き付いてきた。


『昨日、初めて健吾の寝顔を見ちゃった。写メ撮りたかったけど、健吾があまりに強く引っ付いてるから動けなかったんだ。ん?写メ?』


突然、玲奈が俺から離れた。
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