愛されることの奇跡、愛することの軌跡
そして迎えた文化祭前日―


受付用のテントの設営があるから手伝おうとしたら、健吾に断られた。


さらに小声で


『大事な彼女に怪我でもされたら大変』


と囁かれた。


学校でこんなこと言われること滅多になかったから、多分私の顔は固まってる。


でも健吾はなに食わぬ顔で設営の輪に戻り、


『おーい、沼尻、右前の金具ついたか?』


って普通の先生になってるし。


ずるいよな、大人は。


気を取り直して私はテーブルに"当日受付"などの紙を貼る。


チケットやお金の入った金庫は明日、健吾から受け取ることになっている。


明後日も。


そして最後の締めも私達がやる。


お金が絡むので同じ人がやった方がいいという判断だった。


設営が終わると、トムに


『じゃ、2日間よろしくな』


と言われ、私は


「丸投げするからよろしくねー」


と返事しておいた。
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