愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『なぁ、吉住(ヨシズミ)』


吉住?


え?じゃぁ、告白してるのは、アルトサックスの後輩の吉住カオリちゃん?


そうか、部活で関わっているうちに…


『俺な、昔この高校にいた頃、失恋して心がズタズタになってね』


紅葉さんのことだ。


『5年くらい、引き摺っていたんだ。女の子はいいよね、そういうところ、サバサバしてるイメージがあるから。新たな一歩を踏み出すなんて、俺にはなかなか出来なかった』


『よっぽど、好きだったんですね、その人のこと』


そうだ。


紅葉さんはきっと、素敵な方だったに違いない。


『そんな失恋のトンネルから抜け出させて、俺に太陽より明るい光を当ててくれたのが、今の彼女でさ』


それって、わ、私のことでいいんだよね?


『俺は、ひとりの女性を好きになると、とことんハマるタイプで、さっきの失恋も、結局は俺の愛が重すぎたことが原因なんだ』
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