愛されることの奇跡、愛することの軌跡

―ここにいる時間は、まだそんなに長くはないと思う。


だって、ひとつになるまでの時間が、いつもより大分短かったから。


『玲奈、おいで』


愛し合った後、服を着てソファーに座る健吾が、私を正面から抱き締めた。


"抱っこ"されてるみたいな状況。


健吾は両腕を私の腰に巻き付け、さらに体を密着させた。


『まぁ、間違いなく良美さんにはバレてるな』


「やっぱり？さっき事務所を好きに使ってと言われた後良美さんに"私は健吾と玲奈ちゃんの味方だから"と意味深に言われた時、ちょっとそう思った」


『それは言葉の通りだろうけど、良美さんは、喜んでるんだよ』


「喜んでる？」


『俺が女性に対して適当だったのを知ってるから。元を辿れば、生き別れを選んでしまった自分のせいだという罪悪感』


実穂さんから聞いた話と重ねる。


健吾は良美さんの気持ち、分かっていたんだね。


『でもさ、過去はどうあれ、俺たちにはそうやって応援してくれる人がいる。感謝しなくちゃ』


「うん、そうだね」