愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『お待たせしました』


マスターが置いたカップからいい香り。


『君たちは、受験生かい?』


「『はい』」


『じゃぁ、受かって、東都大に通うようになったら、またここに来なさい。ジャスミンティーを特別に用意してあげるから』


『ありがとう、マスター』


健吾がお礼を言う。


『坊っちゃんのとこの、生徒さんなんですから』


『その"坊っちゃん"は、やめてくれる?俺がやっと"マスター"に呼び変えたのに、長谷川さん』


マスターの長谷川さんは、以前成瀬川邸で執事をしていたらしい。


10年ほど前に引退し、趣味が高じて売りに出されていたこのカフェを買い取って営んでいるのだそうだ。


東都大に程近かったのは、ただの偶然。


『申し訳ありません。健吾さん』


「健吾は、学校に戻らなくて大丈夫なの?」


3年生は、もう既に週1回の登校になってるけどね。


先生って、何かと仕事があるんじゃないの?
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