愛されることの奇跡、愛することの軌跡
教室に帰って、最後の健吾のLHR。


だけど…


『謝恩会、予定で今週の土曜日とのことだけど、悪いが所用で出られない。俺の都合で申し訳ないが、その謝恩会は俺抜きでやってもらって、改めて4月1日の日曜日、親御さんはなしでこの教室で行いたいんだが、どうだ?』


教室内で、意義を唱える人はいなかった。


『その時、ここで最後のLHRを行う。今日は、ラスト前のLHRだ』


"今日のテーマは…"と、健吾が黒板に書いたのは、


"カミングアウト"


『この言葉は元々性的指向とかHIVを表明することとして使われたのが語源らしいけど、今回はもちろんそういうことじゃなくて、単に人に知られたくないことを告白すること、という意味で捉えてくれ』


健吾は、チョークのついた手を教卓に置いてある布巾で拭った。


『今日、みんなが卒業式を迎えたことに当たって、俺から君たちにカミングアウトしたい』


みんな口々に


"え?先生がカミングアウト?"
"ナントカからの卒業とか、そういうことじゃないの?オンナとか、タバコとかさ"
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