愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『まぁ、高校までがナルガクだったわけだから、お坊ちゃんに変わりはないだろうけど、成瀬川家と聞けば気にはなるんじゃね?』


渡辺くんが茶々を入れる。


『渡辺の考え方が多分大半だと思うよ』


表情を変えずに健吾は答える。


『もう1つの嘘は、このクラスで最初に自己紹介をした時、母の病気が理由で東京に戻ってきたと言った。ところがそれも嘘で、母はピンピンしてる。嘘をついたのは、たった2年で東京に戻ってきた理由を詮索されたくなかったからだ』


『じゃぁ、本当の理由は何ですか?』


クラスのムードメーカーだった岸さんが聞く。


『俺はこのあと、成瀬川家の人間として、後を継ぐための準備に入る。この1年は田村先生の代理として繋いだけど、これからは、敷かれたレールの上に乗るような人生を歩むんだ』


『先生!』


陽平が手を挙げた。


『何だ?上杉』


『先生はどうして小学校の先生になろうと思ったんですか?』
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