愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『俺は3年間、教師という職業をやらせてもらえた。そこでもう一度だけ、未練がましいけど俺に授業をさせてもらえないだろうか。4月1日。翌日が入学式だったりして忙しいだろうけど、全員の出席を願うよ』


自然と全員から"はい"という言葉が出てきた。


教卓に戻った健吾はそれに"ありがとう"と答えた。

『今日、このタイミングでカミングアウトした理由は、今から配るこの卒業アルバムには、俺の名前が"成瀬川健吾"になっているからなんだ』


教卓の上には卒業アルバムが積み上げられている。


『実は、札幌の小学校でも6年生を送り出してるけど、その時の名前が"橋本"なんだよね。やはり、クラス運営の弊害を恐れて本名を名乗らなかったんだ。でも、出来上がったアルバムを見て、偽物の俺を見ているような気がした。だから今回は、本名での掲載をお願いしたんだ。俺が、きちんと教師をしていた、証として』


一気に言い終えて、一息つく健吾。
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