愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『謝恩会というよき日に、最高の形で失恋しようとしているわけか?』


『金澤の答えを聞く前にお前が結論出すなよ』


『お前がどこまで本気か知らないが、負け戦とはまさにこのことだ』


このふたりの会話が目立ったのか、いつの間にか健吾への黄色い声は止み、ふたりの会話の声だけが既に謝恩会は終了しているこの会場に響く。


『金澤をお前から奪い取ると言えば、お前はどう反応するのかな』


『お前こそ、俺の返事を聞く前に勝手に俺が玲奈と付き合っていると結論出すなよ』


"え、違うの?""あのふたり、噂はあったよね"とひそひそ話が私の耳に入ってくる。


『へぇ、真相はどうなんだか』


『お前が戦う相手は、俺じゃないし、玲奈の彼氏は、お前には間違いなく勝ち目がない』


静まりかえる会場。


健吾はステージの上で楽器を磨いている。


多分、私が何か言葉を発しないと、この場が終わらない。


私はフロアの真ん中で、陽平の位置から一歩前に出た。
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