愛されることの奇跡、愛することの軌跡

＊再び、成瀬川邸

私は、謝恩会の後、健吾の指示である駅前で待っていた。


健吾と一緒に行動をすると、たとえ良美さんのアトリエを使っても危険と判断したから。


謝恩会の後なので、誰が見てるかわからないから、成瀬川邸に行きやすいこの駅前のロータリーを指定された。


予定より遅れてしまい、着替えることができなかった私は結局、そのままの服装。


すると、私の前に赤い車が止まった。


車から降りてきたのは…


『玲奈ちゃん、お久しぶり』


「えっと…井上さん？」


いつぞやか横浜のゴールドクラウンホテルで会った、健吾の先輩の井上さんだ。


「なぜ、ここに？」


『ここに？って、玲奈ちゃんを迎えに来たというのは、理由にならない？』


迎えに？なんで井上さんが私を迎えに来るの？


『まあ、怪しむのは無理ないよな。健吾に散々悪いこと教えて一度ボロボロにしたのは、僕だしね』


井上さんはそう言って頭を掻いた。