愛されることの奇跡、愛することの軌跡
ここには5つの宴会場があるけど、どこも宴席の真っ最中だし、ここはトイレとの導線ではないのでホテルスタッフ以外の人は通らない。

「えっ?」

私は肩をビクッとさせ驚いた。

「うわぁ!?」

声の聞こえた方向に顔を向けると、そこには紺地に薄いストライプの入ったスーツを着ていた男の人が立っていた。

『驚かすつもりはなかったんだけどなぁ』

といいながらその人は私に向かって困った顔して微笑んだ。

『その華やかなお召し物に相応しくない悲しい泣き顔だね』

男の人は私にハンカチを差し出してくれた。

「あ、ありがとうございます」

何か、誰かの優しさが欲しくてその親切に素直に甘えてみた。
< 5 / 548 >

この作品をシェア

pagetop