愛されることの奇跡、愛することの軌跡

『それからの俺は、人の愛がさらに信じられなくなって、臆病になって、女性と本気で向き合うことが、出来なかった』


健吾は大学生時代の荒れた生活を赤裸々に語った。


『それでも、親が与えてくれた2年という猶予だけは忘れず、一旦親と遠く離れて自立したくて、俺は札幌へ行った』


札幌は、知り合いがいない一人の世界。


『さすがに教師になったら今までのような遊び方は出来ないので、たまたま英会話教室で一緒になった女性と付き合うような形になった。寂しい隙間を埋めてもらえるかな、っていう気持ちだから、それほど女性に執着していないことには変わりなかった。2年という限定だったし。俺はサラリーマンということにして偽っていた』


初めて聞いた話だ。


健吾はこの話を、私を見ながら話してくれていたような気がするけど、今は視線は窓の外。