愛されることの奇跡、愛することの軌跡

『教師1年目の秋に、ここの文化祭を見に来たんだ。そこで、ちょっとケガをしてしまった女子生徒の手当てをたまたますることになって』


私が弁慶の泣き所をティンパニーのペダルがぶつかって流血した事件の時だ。


『俺は、その女子生徒に…一目惚れした。それこそ、札幌に戻って児童と向き合っている時も、四六時中、ずっと彼女のことが全く頭から離れなくなった』


健吾は一瞬、私を見た。みんなが気付かない程度に。


『そして、その付き合っていた女性に対してもそれは同じで、どんなに頑張っても、俺は…その女性をそれから抱くことができなかった』


『何で？』


岸さんが聞く。


『一目惚れした彼女のことを思ったら、その女性の前で、全く男としての反応を示さなくなったからだよ』


『それって"勃たなくなった"ってこと？』


入江くんがはっきり聞いてきた。