愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『あの、ゴールドヘブンリーホテルで会った時の君の"うさぎちゃん"な泣き顔も、まぁ、可愛かったけどね』
「先生、私を誉めても何も出ませんよ。それとも、私を強引に学級委員にした罪滅ぼしとかですか?」
『アハハ、君と話してると飽きないな。さぁ、着いたよ』

"先に降りて徳重先生のとこ行ってて"と言われた私は、すっかり行き慣れたエントランスからの道のりを歩いた。

昨日私を抱きしめた訳を、聞きたかったのに…

先生の心を見たいような、見たくないような…そんな意気地無しな私が、先生に質問するのをやめさせてしまった。

このマンションの7階にある徳重先生の部屋。

―ピーンポーン―

"はぁい"と出てきたのは美郷。

「お邪魔します」

廊下の突き当たりにリビング、手前にキッチン。

徳重先生は忙しそうにすき焼きの準備をしていた。
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