愛されることの奇跡、愛することの軌跡
私は、うつむく先生の方に体を向けた。

「私、本当にあの時はビックリしただけで、先生を怖いと思ってないです。思うわけない。だって…」

私はカバンからあの時のハンカチを取り出した。

「これ、カバンに入れて持ち歩いているくらい、先生に憧れてるから」

先生は目線を私が持つハンカチに落とした。

『ズルいよな、俺』
「え?」
『そのハンカチ、来月会えると分かっていたのに、君の心に俺が住みついて欲しくて渡したんだ』

え?

「意味が、分からないよ」

だって、あの時が私と先生の初対面のはず。

『君はあの時俺と初対面だと思っても、俺は君を、金澤玲奈を知っていた』
「え?」
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