愛されることの奇跡、愛することの軌跡
「え?」

先生、私に会うのが楽しみ?

『俺、結構吹奏楽部の演奏会見に来てたんだけどな。剛が卒業した後も』
「全然、…気が付かなかった」
『理由はそれだけじゃないんだけど、君に会えるのを一番の楽しみに、東京に戻ってきたことは事実だ。あのゴールドヘブンリーホテルでの一件は全くの偶然だけど、君は完全に俺を初対面だと思って接しているのが悔しくて、ハンカチをあげたんだよ。さっきも言ったけど、俺の存在を印象付けたくて』

私は、どう返せばいいのか言葉が見つからずにいた。

「自動的に今の先生に返すのに上手い言葉を見つける電子辞書って、ないのかな」
『そんなの、ダメだよ』
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