愛されることの奇跡、愛することの軌跡
先生は私の目を見つめた。

『他の人や他の文献の言葉を真似して使っても、それは自分の心を示すものではない。君の今の答えは"言葉が見つからない"ってこと。戸惑ってるってことだろ?それで今はいいんだ』

先生は微笑みながら前を見た。

『本当はこんなこと、君の卒業まで黙っているつもりだったのに、学級委員に君を選んで、少しでも長くいられたらいいな、って考えてただけなのに』

先生はため息をついた。

『教師と生徒として出会ってたった3日でこのザマだよ。…君が俺を怖がってしまったのではないかと、正直焦ってしまった。いや、今も焦ってる』

先生は首を横に振りながら

『もうすぐ25になるのにな。俺はしかも聖職に着く身なのに、生徒を怖がらせてしまったことがショックで…』

項垂れた先生の姿を見て、私は、私は…

先生には申し訳ないけど、そんな先生が…

とても幼くて、可愛くて、愛しく思ってしまった。
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