愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『あ、"意外"って顔したな?今』
「ごめんなさい…」

すると、ひとつの宴会場のドアが開き、化粧バッチリなロングヘアの内巻きロールな女性がこちらに向かって目線を送った。

ここまで来られないのは、その女性は片手に赤ワインが入ったグラスを持っているから。

そう、このロビーは飲食禁止だ。

『ちょっとぉ、ケンゴ、あんた何してるのよ。早く戻らないとお父さんに怒られるわよ』
『うるせーなぁ、怒られないうちに戻るよ』

女性は"全くもぅ"と呟きながらドアを閉めた。

私はふと、扉の前にある文字を読んだ。

「成瀬川グループ創立100周年記念パーティー?」
「え?成瀬川家の人?」

思わず"ケンゴさん"を指差ししてしまった。

『アハハハ、大したことないよ。次男だし』

この人、確かにイケメンで、言葉づかいも丁寧だけど、あんまりお坊っちゃまって言う感じがしない。

成瀬川家と言えば、出版業を中心に、新聞社、大手テレビ局の筆頭株主、学校経営…もっとあったかなぁ

とにかく超大企業。旧財閥?みたいな。

日本で知らない人は多分、いない。
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