愛されることの奇跡、愛することの軌跡
「せんせ…ううん、健吾さん、私、嬉しいよ」

私はそう言って先生の左肩に自分の右手を乗せた。

「怖がってしまったのはごめんなさい。私、やっぱり恋愛経験が浅い子供だし、健吾さんは私と7つ違う大人だもん。健吾さんに合わせなきゃ、って思ったら、かえって遠慮しちゃったのかも」

私は先生の左肩に乗せている右手の親指を広げた。

「でも、健吾さんの今の言葉を聞いたから、私、自惚れてもいい?」

先生が私を見たから、私は先生に笑顔を作った。いや、自然に笑顔になった。

「私は健吾さんにとってただの生徒だろうけど、時には健吾さんの横に立つ、役に立てる彼女の存在になってもいい?」
『金澤…』

先生は目を見開いた。

「私、自分の思いを話してくれた健吾さんの勇気に感謝したい」

すると、健吾さんは私の右手を下に下ろし、自分の左手を重ねた。
< 90 / 548 >

この作品をシェア

pagetop