愛されることの奇跡、愛することの軌跡
「ただいまぁ」

私は健吾さんと離れるのは寂しかったけど、それでも心は通じた嬉しさから、いつもより声を張り上げていたんだ。
だから…

『お帰り。あら、アンタいつもより元気いいんじゃない?何か良いことでもあった?』

このお母さんは、さすが日頃私の変化を見てるんだね。

「そうなの。お母さん、あのね…」

そこまで言って、口をつぐんだ。

いつもなら、1日の出来事を包み隠さず話す。
でも、今日の話しはまだ、お母さんにも話せない。

だって、まだスタート地点に立ったばかりだし、健吾さんは担任だし、しかもあの成瀬川家の人間。

まだ、言えない、言わない。
< 94 / 548 >

この作品をシェア

pagetop