ロッシュの限界
「ね…ぇ、もう戻ろう」
不自然だけどこの際仕方が無い。
途中で話を切ってその場から離れようとしたけれど
…失敗した。
「ねぇ、委員長」
呼ばれて、顔をあげて、目があって
咄嗟にまずいと思った。
慌てて逸らそうにも、佐藤の強い瞳があたしの視線を捉えて離してくれなくて。
見つめ合ったまま、数秒。
目が合っているはずなのに、彼の表情がわからない。
それは
傾き始めた太陽が逆光になっているからか、あたしの目がおかしくなってしまったからなのか。
とりあえず、さっきから狂ったように鳴っている心臓の音が煩い。