ロッシュの限界
「佐藤」
「ん」
「戻るよ。先生怒ってる」
「ん?…うん」
「ちゃんと補習受けないと」
「…んー」
返事はするけど、動く様子はなく。ぼんやり空を見上げたままで。
なんかおかしい…?
あたしは首を傾げた。
いつもなら。佐藤がサボって、あたしが探して、見つけて、連れて帰る。そのサイクル。
あたしが見つけたら佐藤は観念して、大人しく教室に戻るのに。
今日は珍しく渋っている。
数学の補習そんなに嫌なのかな?
「…佐藤?」
「なに?」
「戻らないの?」
「うーん」
少し考えた後に「もう少しだけ」と目の前で手を合わせる仕草をした。
「ふぅん…まぁ、いいけど。ちゃんと教室戻ってね。あたしまで先生に怒られちゃうよ」
そう言い残してその場を立ち去ろうとした時。
何かがあたしの手首を掴んだ。