君の居場所
そんな無責任な内容だった。
何で?
春音のように捨てたいのか。
そう思った矢先、
〝通帳〟の下に置いてあった1枚の紙に目がいった。
『なん、だよっ!
これっ、誰の家のでんわなんだよぉ。
おれ、これからどうするの?』
子供の無垢な叫びは誰にも響かないもので。
静かに1人、涙を流した。
なぶり書きのような手紙の文字も、
相当な焦りを感じるものだった。
どうしてここまでして俺の元から去るのか、
分からなかった。
それに、こんな誰かも分からない人の電話番号も残して。
でも、かけるつもりは無かったんだ。
〝何かあったら〟と書いてあったから。
俺はかけない。
そのつもりであったし、それ以外に思い浮かばなかった。
けど。
父さんは1カ月経っても帰ってこなかった。
だから俺は、かける事を決意した。