君の居場所
「行ってきます。」
誰もいない閑散とした家の中で響き渡る声。
母も父もいない。
捨てられたから・・・。
別に僕はそんなの気にしない。
まあ、気にするとすれば世間体。
『いったい親はどうしたの?』
『可哀(かわい)そうに。よく頑張ったわね。』
『だから今時の親はいけないんだ。』
『育児放棄だなんて。
あの子に近づかないようにしなさい。』
そんな声がたくさん飛び交う。
だから僕は、一人暮らしだ、と言っている。
嘘はついていない。
一人暮らしなんだし。
親の事に触れてくるような奴は嫌っている。
捨てられた、と知られるから。
あれは僕が5歳の時のこと―――――・・・