君の居場所
けれど、そんなに仲の良かった俺らは―――
離れ離れになる。
『らい君っ・・・。
わたし、はなれんのやだよぉ』
そう言った彼女は、涙を流して俺を見た。
『おれもだよっ。
何で、はなれないといけないの!?』
離れ離れになるのは、俺の両親の仕事の都合だったからだ。
でも。
俺まで付いて行かなくてもいいじゃないか。
何で俺が。
そんな思いでいっぱいだった。
気付けば俺も、涙を流していた。
『なかないでよぉ・・・。
わたしだって、さみしいのに。』
うわーん、と泣きながら俺にしがみついてきた。
俺らの背は、そんなに変わらなくて。
ギュウッと抱きしめると、ふんわりと甘い香りがした。
この日の2週間後に、俺達家族は出発する。
『春ちゃん、おれ、ずっといっしょにいたかった。』
『らい君・・・。
そんなの、わたしもに決まってるよぉ。』
優しい春の風に包まれながら、言葉を紡(つむ)いだ。
悲しい、思い出。