私と、はると、さくら。
私と、はる。
長い長い坂道。
どこからか舞い落ちてくる桜。
髪を揺らす柔らかい風。
春のどこか切ない香り。
私はこの感じがなんとなく好き。
本当になんとなく。
でも、自分自身はあんまり、
好きじゃない。
「おい。春?
はぁ~るっ!」
「わっ!」
ぬっと突然視界に入ってきた
見慣れた顔を見て、
私はハッと我に帰る。
「おい~。話聞いてた?」
「え?あ、ごめん…」
私はうつむき小さな声で
彼に謝罪する。
「……まぁ、いいよ。
俺、腹へった。
駄菓子屋、行かない?」
「あ、うん、いこっか」
「おう!早く行こうぜ!」
ニコッと笑う彼を見て
やっぱり好きだと私は思った。