ライトブルー



「ナポレオンパイ、どうだ? 美味いだろ?」

 私は頷く。彰吾とケーキを食べるという状況を、今さら疑問に思う。

「今日はいつもに増して仏頂面だな」

「すいませんね、仏頂面で」

 彰吾は窓の外に広がる暗い海に視線を移す。

「……でも嫌いじゃないぜ」

「は?」

「人間、鈍感で淡々としてるくらいがちょうどいい。おまえのようにな」

「それ、褒めてんの? 貶してんの?」

「褒めてんだよ」

 彰吾の目が私を捉えた。

「鈍感で淡々としてるおまえのこと、俺は嫌いじゃねぇよ」

「私、そんな気休めみたいなことを言われて慰めてもらうほど傷ついてないし」

 彰吾はあきれた顔で大きくため息を吐いた。

「俺はなぁ、おまえが好きだ、って言ってんだよ。いい加減空気読め」

 彰吾は笑う。こんな緊張感のない告白なんて、なかなかあるもんじゃない。思わず私まで吹き出してしまった。


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