とろける恋のヴィブラート
「そうだ! 確か、ガブリエル・カール……」


「ガブリエル・カール・アッヘンヴァル」


 奏が思い出す前に御堂がさらっと発音する。舌を噛みそうな長い名前に、奏は乾いた笑いをこぼした。


「でも御堂って日本名――」


 つい余計なことを言いそうになって奏は口を噤んだ。


(もしかして、複雑な家族だったのかな……)


 すると、それを見て御堂は、別にかまわない。といったふうに小さく口元で笑った。
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