とろける恋のヴィブラート
「母親は日本人だからな」


(じゃあ、御堂さんのお父さんが創立者ガブリエルの息子ってことだよね……)


「そう、だったんですか……」


(御堂さん……どうして日本に来たの? どうして私のピアノを下手って言うの? どうしてピンクのドレスがいいって言ったの?)


 聞きたいことは山ほどあるのに、奏は何一つ御堂に尋ねることができなかった。


 束の間の沈黙に、なんとなく気まずさを煽られるような気がして、奏は何か他に話題はないかと頭をフル回転させた。
< 107 / 458 >

この作品をシェア

pagetop