とろける恋のヴィブラート
 ※ ※ ※

「私、ベルンフリート音楽事務所マネージメント部の青山奏と申します」


 先程からパーティーの来賓に十回、二十回は同じような自己紹介をしている。


 先日、調律をしに来た時とは違い、ホール内は煌びやかでアクセントに豪華な生花が所々に飾られていた。


「ほぅ、御堂君の伴奏を務めるというのは君かね?」


「はい、僭越ながら……」


(うわっ! この人、M&Dレコードの社長だ……!)


 あたりを見渡すと、大企業の重役やテレビでしか見たことのないようなアーティストがあちこちにいる。


 そして、一瞬その場の空気が静まり返ったその時――。
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