とろける恋のヴィブラート
「…………」


 そんな奏の背中を見送りながら、人知れず柴野の表情が微妙に険しく変わる。柴野はピンクのドレスの入った袋を開けると、じっとそれを冷たく見つめた。


「あ、君」


「はい、お客様」


 柴野はすれ違いのホテルのメイドに声をかけて呼び止めた。
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