とろける恋のヴィブラート
「どうかしたのか?」


「え? あ、いいえ……なんでもないです」


 と言いつつも、携帯を持つ奏の手は御堂にもわかるほど震えていた。そんな奏を御堂は訝しげに見つめた。


「なんでもないって顔じゃないけど?」


「すみません、私……これから会社に戻ります。また何かあったら連絡してください」


 奏は、ぺこりと頭を下げると、踵を返した。


「待て」


「っ!? 御堂さん?」


 背後から腕を掴まれ、驚いて振り向くと、険しい表情をした御堂の視線とぶつかった。
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